- 著者
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福岡 荘尚
森田 祐子
小池 尚
木下 博章
- 出版者
- 公益社団法人日本セラミックス協会
- 雑誌
- 日本セラミックス協会学術論文誌 : Nippon Seramikkusu Kyokai gakujutsu ronbunshi = Journal of the Ceramic Society of Japan (ISSN:09145400)
- 巻号頁・発行日
- vol.111, no.1292, pp.277-281, 2003-04-01
- 参考文献数
- 16
- 被引用文献数
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径方向に屈折率分布を有するr-GRINレンズ(radial Gradient Index Lens)は光学設計上高い収差補正能力を持つことか知られている。このr-GRINレソズの中で,レンズ媒質中での色収差がほとんど発生しないものを低分散分布GRINレンズと呼び,白色光源下において,従来の均質レンズと比較してレソズ枚数を約1/3に削減し,光学系の超小型化か可能である。そこで著者らは,r-GRINレンズのガラス組成の設計を行い,Si0_2-Ti0_2-BaO-K_20系ガラスが色収差かほとんど発生しない低分散分布r-GRINレンズの最適な候補であることを明らかとした。この組成を目標に作製を検討し,屈折率差が0.018,投影解像度100本・mm-1の低分散分布r-GRINの作製を報告した。次に,分布付与溶媒の検討によるΔnの拡大検討を行った結果,メタノールとジイソプロピルエーテルの混合溶液を用いたとき,Δnを0.022まで拡大することが可能となった。しかし,これらのBa量では,最大の濃度差を付与しても, 0.04程度,又はそれ以上のΔnをもったr-GRINレンズを作製することは困難で,小型で高性能の光学系に適合することはできなかった。そこで,r-GRINレンズのΔnを拡大することを目的とし,ゾル調製時のBaを増量することによりBaの初期濃度を高くして,最終的に濃度差を大きくとることか可能となるSi0_2-Ti0_2-BaO系のゾル調製方法を遊星式かくはん脱抱腹により検討し,ゾル調製時のBa濃度を増加させ,かつ,ゾル調製工程を短縮し,従来のスクーラーによるかくけんでは調製が困難な領域の均一なゾルを容易に調製できることを明らかとしたそこで,遊星式かくはん脱泡機を用い,ゾル中のBa濃度を増加させてゾル調製を行いゲルを作製し,すでに報告したゲルの処理条件で処理すると,ほとんどのゲルに割れが発生した。従来のゲルの処理条件は,ゲル中のBa濃度が低く,処理溶媒はこの濃度に適合していた.しかし,本研究でりゲル中のBa濃度は高く,粗大な酢酸バリウムの結晶がゲルに折出して割れが発生したものと考えられる。そこで,高いBa濃度に適合した溶媒等のゲル処理条件を設定する必要があった。したがって,効率よく適切なゲルの液浸条件を決定するために,統計的な手法である品質工学(田ロメソッド)を用い,ゾル仕込み条件とウエットゲル作製条件を決定した。そして,決定した条件により作製したゲルを用いて,Δnが0.04程度のSi0_2-BaO-Ti0_2-K_20系の低分散分布r-GRINレソズを作製することを目的とした。